『すごい建築士になる!』ための全部つまった1冊は、そのまま「すごいインテリアコーディネーターになる」としても読める、良書だった件

建築家の関本竜太さんが本をお出しになったと聞いて、しかもタイトルが「すごい建築士になる!」だというじゃないですか。そりゃまたすげーぞ、おいっ…と思いまして、早速Amazonでポチっとお取り寄せ。

とても素敵な内容だったので、興奮が冷める前にご紹介をしたためておこうと思います。少し長文ブログになりますがおつきあいください。

関本さんといえばいつも
「水玉のシャツ」を着ていることで有名なのですが
表紙をめくると水玉が!
期待を裏切らないよねー笑

タイトルのインパクト

「すごい建築士になる!」
ってとてもわかりやすいですよね。本屋に並んでたら一発で自分に関係のある本かそうじゃないかを判断できるじゃないですか。建築関係者、学生さんなら思わず手に取る。


ですが・・・じゃぁ、これ、「自分が出版する側」だとしたらどうでしょうか。なかなか恐ろしいタイトルだと思いませんか?仮に「すごいインテリアコーディネーターになる!」という本を出版してくださいよリカさん~っていわれても、恐れ多くて躊躇しちゃいます。なかなかの強心臓じゃないか、おまえさんはどの程度のすごいやつなんだ、と皮肉のひとつでもぶつけてくる人もいるかもしれません。


冒頭「はじめに」には、そんな読者側のツッコミ(自分ですごい建築士って言っちゃうのすげーじゃん)をとっくに見越したうえでの明解な答えが先回りしてちゃ~んと書かれてありました。読み手はすっかり納得して素直な気持ちで本のページをめくることになります。


つかみがうまいなぁ。

いい家を設計するための、うわべのハウツーではなく、根本的な哲学を非常に平易な言葉で私たちに伝えてくれています。
設計/建築というのは、クライアントの要望を形にする仕事ですが、インテリアコーディネーターも実は扱う商材とエリアの差があるだけで、設計事務所の業務内容とほとんど差がありません。ヒヤリングや提案、プレゼン、事務所経営のコツ・・・書いてある内容すべてが自分ごととして、言葉が体にしみました。

クライアントの御用聞きにならない

どんなプランニングがいいですか?・・・と、まるまる質問をしてしまう建築士(インテリアコーディネーターも!)がいます。こういうスタンスを「御用聞き」といいますが、1から10までクライアントに訊くのはナンセンス。ですが、クライアントの要望も訊かず一方的な提案をするのもよくありません。

この話は、インテリアコーディネーター界隈でもよく言われることです。ヒヤリングって何を質問したらいいんでしょうか?どこまでクライアントの言葉を真に受けていいんでしょうか?と。

「すごい建築士になる!」の中で関本さんはシンプルにこう答えています。

「この人ならこういう空間が欲しいだろうなと考える」、つまり共感するということです。

「すごい建築士になる!」関本竜太

私だったらこう設計するのにな・・・じゃないんです。「私がこの人だったとしたら」こう設計してもらいたいだろうな、を見つけること。私自身はそれを「クライアントの思想に憑依する」と表現しているのですが、関本さんは共感とかイタコいう言葉で書かれていて、まったく同感いたしました。


※アニメ【推しの子】第7話で、あかねちゃんが星野アイに豹変したあの感じ
※わかる人にだけ伝われ(笑)


ご自身の設計エピソードを交えたプランニングやプレゼンテーションの手法、とても読みやすく、興味深く、いちいち「わかる!わかる!私もそう思う!!そう思ってた!そう言おうと思ってた!(笑)」と共感させられるお話ばかり。

言語化スキルを高める


関本さんの本を読んで感じるのは、内容ももちろんのことなんですが、圧倒的にわかりやすい表現と、ストーリーの組み立て力の高さ。そのことは、ご自身でも本の中でおっしゃっていました。

私たち設計者の仕事の価値は、相手に評価されてはじめて定まるというところがあります。相手に正しく自分の考えを理解してもらうためには、アウトプット力を高めなければいけません。

アウトプット力を高めるのに必要なのは、言語化のスキルを磨くことです。

「すごい建築士になる!」関本竜太

日々、しっかりブログを書くことは言語化スキルを磨く訓練になります。(ブログはクライアントへの「お手紙」だと関本さんはいいます。全くその通りだ!と思いました)
facebook等のSNSもただ「おもしろかったー」とつぶやくのではなく、人を惹きつける魅力的な文章でちょっと笑いのオチも意識する、と。自らの表現力を鍛えるためには日頃の積み重ねを避けて通れません。

そもそもですが、設計者(インテリアコーディネーターも同じだと思う!)にとって「鈍感」は致命的です。世の中すべての出来事には敏感であるべきで、自分事として考える事が大事だよと関本さんはおっしゃいます。ボーッと生きていたり、せっかくどこかに出かけてもな~んにも気にしてなかったりじゃ、もったいないですよね。そして、ブログやSNSで発信するときは、出来事をただ書くのではなく必ず「考察」も添えることを心掛けると言語化スキルが向上するし、プレゼンが飛躍的によくなりますとアドバイスを書かれています。

わたしは関本さんのブログにもう何年も前から虜になっていたクチですので、言語化スキルのお話はとても腑に落ちました。日頃から文章を書きなれている(推敲を日々やっている)人の文章は、読み手ファーストでわかりやすくそぎ落としているにもかかわらず、書き手のいいたいことも絶妙なワードチョイスできちんとセンテンスの中で主張しているので、理解しやすいのです。

プランニングのステップ、基本設計の具体案、事務所経営、借金の話、具体的な細かいお話は、実際に皆様が手に取ってぜひ読んでください。根底に流れている哲学、一貫してクライアントへの誠意を感じる1冊です。
そして、「おわりに」の直前に書かれている一節、「失敗しないって怖いこと」の章は、関本さんと同じ1971うまれの私としては、胸にズキュンときました。


私も、打席に立ってバットを振ろうと思います。

表紙のざらつき感
アアルト展の図録と似てる♪
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