book and bed TOKYO 京都

book and bed tokyo

「泊まれる本屋」がOPENしたと聞いてはいた。
それは池袋にあるという。

すごく気になっていて一度行ってみたいなぁとずっと思っていたのだけれど、
とにかく池袋という場所が自宅からなんとも近すぎた。
泊まる理由を見つけられずに1年がたってしまった。
それが、2016.12、京都にもOPENするらしいと聞きつけたので、
ようやく「泊まる理由」が出来た私は宿泊体験をしてきた、というわけです。

雑居ビル。
なにということもないいわゆる古い雑居ビルで、
狭いエレベーターの9階のボタンを押すとガタンガタンと動いて、
そして「チーン」と言って(チーンと言ったような気がしたのだけれど、もしかしたらチーンといわなかったかもしれない。もう記憶は曖昧だ。でもチーンというのがすっかり似合っていたエレベーターだった)ゴトっと止まり、
扉が開くと、

ネイビーブルーの扉が正面にあった。

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看板があるわけでもなくドアノブのところにぶらさがるプレートも素っ気ない。
どうぞ、でもなく、OPENしてますよ、でもなく、入り口はこちら、でもなく。
なんだか秘密基地のような。

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おそるおそる扉を開けると
そこはピンクだった。

女の子がひとりいて「いらっしゃいませ」といって控えめにニコっとした。
女の子はおかっぱ頭で毛糸のポンポンした帽子を被っていた。

「扉を開けたら、ホテルのフロントはこちらです、バーン!」みたいな、
そんな空間が広がっていると勝手に想像していた私はちょっと面食らってしまった。
窓がない暗くてピンクで・・・とてつもなく狭かった。
たとえて言うなら・・・トイレの個室をうっかり開けてしまったような、そんな感じの動揺。

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ほんのりエロイ感じのピンクの空間。
小さなBARかDJブースのようだ。
「チェックインお願いします」と私がいうと「お泊りのゴヨヤクですね。身分証明書をミセテクダサイ」と女の子はいった。
少しカタコトの話し方、日本人ではないのかもしれない。
宿泊者カードに記入をどうぞとペンを渡されたのだけれど、
暗くてとても字が書けるような状態じゃない。

そう思っていると女の子はおもむろに本を開く。

「どうそ、お書きください」

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本の形をした補助照明の薄暗い中で宿泊者カードに記入を終えると、
ホテル内で過ごす際のルールの説明をうける。
禁煙であるということ、
ドライヤーは0時以降朝7時までは使用禁止であるということ、
ベッドでの飲食はペットボトルも含め禁止されているということ、
置いてあるシーツは自分でベッドメイクしチェックアウトの際にランドリーボックスに入れて出ていくこと、
チェックアウトは11時だということ、など。

宿泊料5,000円の支払いを済ませ鍵を受けとり、
ようやく扉の先に入れてもらえる。

宿泊者以外は立ち入り禁止で、
宿泊者は24時間出入り自由だ。

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そうやって入れてもらえた扉の先の空間が、これだ。
ガサッとした感じの素地の建築材でつくられた本棚。

ところどころ切り取られている四角い穴が、宿泊スペースの出入り口だ。

今日のあなたのベッドは14番です。
ではドウゾゴユックリ。
良いイチニチを。

そういってフロントの女の子はスっとどこかへ消えてしまった。

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天井からぶらさがるBOOK

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長いベンチソファ。

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ベルベッドのクッション、デニムのクッション。

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墨の色が抜けたような、薄いモルタルの床。

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さて。今日の私の寝床、14番の「穴」を探す。

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見つけた。恐る恐る扉を開ける。

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押入れだと思う。
うん、押入れだ。
押入れじゃん。
押入れよね。

え、ドラえもんどこ?
うん。押入れです(笑)

横幅110センチ、長さ220センチの空間。
天井の高さは80センチ。

座高の高い男性なら
普通に座っていることもままならない・・・寝るだけなら十分か。

工事現場の投光器のような素っ気ないランプが1つ。
2口コンセント。

テープで止められていた壁の張り紙にはWIFIのパスワード。

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簡単に作られた棚が1枚、謎のBOX、つまりこれが「金庫」
貴重品など「シンパイでしたらツカッテクダサイ」って言ってたやつだ。

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とりあえず自撮りをしてみる。
笑顔、つくった。

 

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とにかく、まぁ、仕組みはわかった。
「book and bed tokyo京都」は、
祇園四条駅から歩いて1分くらいのところにある。

舞妓さんたちが生息している祇園、花街、飲み屋が連ねる先斗町(ぽんとちょう)、
眼の前には歌舞伎の南座があり、
いわゆる京都を満喫できる立地にある。

夕食は外に繰り出せばいい。

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トイレは4つ。
シャワーブースは2つ。
学校の水飲み場のような洗面台で蛇口は4つ。

トイレも部屋も男女の区別はない。
私の隣の部屋には男の人で、私の上の部屋も男の人だ。
部屋の扉にはカギもない。

・・・防犯?気にならないの?と聞かれたら

「気にならない。全く」と私は答えると思う。

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日没前はこんな感じ。
大きな窓から外の景色がみえる。

book and bed  tokyo

京都だし、外人さんの観光客ばかりなのかと思っていたのだけれど、
これは意外と日本人のほうが圧倒的に多かった。

20~30代のオサレ男子という印象。
パソコンはMac book airで、
スポーツとかあんまり得意じゃないけど楽器は弾けて、
学生時代のバイトはスタバの店員で、
服は「1LDKアパートメント」か「ユナイテッドアローズ」で買います、みたいな(←どんな偏見)
女の子も泊まっている。20代かなぁ。

服飾関係や出版やデザインとか、
そんな仕事についていそうな人たちに見えた。

45才で泊まってる女は私ぐらいじゃないだろうか。

気が向いたらそこにいる人に話しかけてコミュケーションをとるのも楽しそうだと思う。

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一通り京都の夜を満喫して宿に戻ってくると
ソファには何人かの人がくつろいでいた。

本棚を回遊して気になる本を手にとっては眺め、また次の本を探し、読んで、飽きたらまた別の本。
そんなふうに本棚とソファを行ったり来たりしているのが私のほかに数人の男子。
入口に近いソファには欧米の女の子2人と日本の男の子が1人、(そこで知り合った仲だろうか)静かに談笑を楽しんでいる。
本棚を回遊しているとその静かな会話が耳に入ってくる。

「クリスマスプレゼントって何がいいと思う?」

「そうねぇ、サプライズがいいわ。モノじゃなくて。アクシデント。嬉しいアクシデントがクリスマスには必要だわ」

「それって魔法みたいな?」

「女の子はみんな魔法にかかりたいと思ってるのよ。日本の女の子のことはわからないけれど」

ソファの端っこでは、ビール片手に静かにPCをいじっている男の子。
みんなそれぞれの時間を静かに楽しんでいる。

みうらじゅんと宮藤官九郎の対談エッセイを開くとセックスの正しい「所要時間」について真面目に語り合っている。
村上春樹の横にはレイモンドチャンドラー。
カフカ。
昆虫食の本の横にパーティ料理のレシピ本。
京都の観光案内。
世界の本屋の写真集。
などなどなど・・・・。

book and bed tokyo

何を読もうなんて難しくマジメに考える必要はない。
手にとっては眺め、手に取っては眺め、すればいい。

book and bed tokyo

本棚のまわりを回遊する。

book and bed tokyo

 

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こんな本をパラパラめくる。
関西のおいなりさんは三角形をしているということを、初めて知ったり。

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座布団の真ん中の結びめ、関東は「十字」になっているが関西は「Y」「人」の文字になっているということを知ったりする。

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私が見慣れているタクシーは「カラフル」だけれど、関西のタクシーは「黒」だとか。

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眺めた本はこちら

くらべる東西
おかべ たかし
東京書籍

 

 

あるいはこんな本。
映画の名セリフ集をパラパラとめくってみたり。
とにかくソファベンチでグダーッと過ごせるのだ。

book and bed tokyo

深夜になってそろそろ眠くなるころに1~2冊選んで「14番」の押入れに入った。
布団をかぶりながら本を開いて、
そしてそのまま意識が遠のいて・・・・朝を迎えた。

ビジネスホテルに泊まっていると、
朝早く出かける人が多いように思う。

ここはチェックアウトが11時で、
私は10時までグダグダと寝ていた。

起きて顔を洗いに洗面台へ向かうと、
ソファにはすでに5~6人の人が座っていて、
コーヒーを飲んでいたり、
パンを焼いてつまんでいたりしながら、
また、本を読んでいる。
さっさとチェックアウトしないのだ。

「book and bed tokyo 京都」は、
最低限の照明(いや、それ以下の照度で、とにかくどこもかしこも暗い)で、
ある年齢を超えた人にとってはとてもじゃないけど読書なんてできないような全体的な暗さだ。
「暗くてコマルという人はイッテクダサイ。ランプ持ってきます」と女の子が言っていたので、
必要な人には照明を貸してくれるらしい。

私は穴蔵のような暗さが心地よいのでまったく問題なかったが
、仮に両親を連れてきたとしたら「まっくらで何も見えない」と言うだろう。

一晩中、インストロメンタルのBGMが流れている。
何の音楽だろう。聞きそびれた。
すっごいおしゃれな感じの。

インテリアチェック。
すごくラフで「お金をかけてない」ように見える作りだったけれど、
壁のほんのりグレーに塗装された感じとか、
モールディングで枠取られた窓や、ミラーや、本棚とか。
すごく雰囲気が良かった。

木村拓哉や福山雅治のような「誰が見てもイケメンです」というインテリアではなくて、
星野源や窪田正孝のように「イケメンじゃないのにもてる」そんなインテリアだ。

そう、なんていうか、日本とか和とかでもなく「東京っぽい」感じがした。

 

 

 

 

 

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