【医療の先端/クラウドファンディングで出来る猫を救う方法】「猫が30歳まで生きる日」の読感BLOG
【治らない病気をなくしたい】
私たちは、治らない病気といえば『癌』を思い浮かべる人も多いと思う。ところが実際には『癌』は治らない病気ではなくなってきているそうだ。本当にまだ治らない、治せない現代の病気は『腎臓病』や『アルツハイマー型認知症』などで、そして、私たちが思っている以上に【治らない病気】の種類は多いという。 なぜその病気になってしまうのだろう。 治療法をみつけるためには原因を判明させる必要がある。
例えば腎臓病患者がうけている人工透析は、機能しなくなった腎臓の代わりに血液から老廃物を取り除く対処療法だ。症状の緩和や苦痛の除去に対応しているが病気そのものを治癒は出来ていない。 腎臓病の根本的な原因がわからないのだ。そういう【治せない病気】をなくしたいと考えた著者の宮崎医師が、腎臓病を研究していた副産物として、猫の寿命を伸ばせる発見に至った軌跡を記したのが【猫が30歳まで生きる日】という本である。
いずれそんな未来がくるよねー、の話ではない。うちのぽんず(1歳メス猫)も30歳まで生きることが出来るようになる、目の前の現実の医療の話だ。
ほとんどの猫は腎臓病で死んでいく
宮崎医師たちはある日『AIM』を発見する。
※AIM=アポトーシス インヒビター マクロファージ
『AIM』はタンパク質の一種で、牛や豚、マウス、人間、どの生き物の体内にもあるのだが、なぜか猫だけAIMを持っていない。
ある日の学会、腎臓病を治す鍵は『AIM』ではないかと論文を披露した際、会場の笑いをとるつもりで宮崎医師は「ちなみに猫にはAIMがない」と軽いウンチクを披露した。小話のつもりで何気なく話したことだったけど、講演終了後、『先生!猫にはAIMがないって本当ですか?』と獣医師が声をかけてきた。医師が集まる学会に、専門違いの獣医師が出席していたことも奇跡だが、彼は宮崎医師が知らなかった事実を教えてくれた。
猫の寿命はだいたい15年くらいなのだが、ほとんど100%、猫は腎臓病で死んでいくんです、と。
それを聞いて宮崎医師は大変驚いたそうだ。腎臓病を治すにはAIMが関係してるのではと予測していたところに、AIMを持ってない猫は腎臓病で死ぬ運命だと聞かされた。心がざわつかないわけがない。こうしてたまたま知り合った人間のお医者さんと動物のお医者さん。猫の腎臓病を治すプロジェクトを進めることになる。
医療の先端を知る知的欲求と、ビジネス的な興味を満たす面白さ
専門家は、普通、専門分野の中にしかテリトリーを持たず異専門と交わらない。分野を超えた医者と獣医師が、ひょんなことから出会って共同で研究に向かういきさつは、読んでいてじつに感慨深く、話に引き込まれてしまった。 宮崎医師は特定の学会に所属していない異端児だそうで、その代わりに(代わりにではないか)ワイン会といった趣味的な社交の場によく顔を出すような人らしいが、そういった人脈がのちに潤沢な資金援助をしてくれることになるパトロン(スポンサーとなるメガバンクのトップなど)と知り合うなど、支援者をつかみながら研究が進んでいく。
医療の先端の話が垣間見れる教養としての面白さと、業界を超えて繋がっていくビジネス的な面白さ、2つの柱で楽しめる本で、なんだかとてもワクワクした。
猫を救うクラウドファンディング
結論をざっくり言うと、いよいよ『猫の腎臓病を治す薬』は世に出せる直前にきている。
ちなみに猫にAIMがないというのは実は間違いで、AIMはあるけどストッパーがかかっているというのが正しい。猫だけじゃなく猫科の動物(ライオンやチーターやヒョウ)がみんなそうなっている。
※腎臓病で死んでしまうという大きなリスクを犯してまで、なぜ猫科の動物だけAIMを機能させない進化をしたのかは謎でこれから研究をすすめたいとのことだ。
『猫の腎臓病を治す薬』は、ストッパーを解除しAIMが機能するように引き金をひく仕組み、副作用がないという治験結果も出ている。 ただ残念ながらコロナウィルスまん延で、研究がストップ(足踏み)した。(スポンサー企業、あしながおじさんたちのコロナ禍の業績低下で資金調達が滞っている)
そこで、東京大学が基金を設立した。個人で支援(クラウドファンディング)が出来るようになっているので思いのある人はアクセスしてみてはどうでしょうか。どうやら2億ものお金が集まってきているそうだ。それだけ、猫に長生きしてもらいたいと思っている愛猫家が多いということだ。
東京大学基金ホームページ
猫の腎臓病は、治せるだけじゃなく予防も出来るという話に進んでいて、サプリのようにキャットフードに取り入れる事でそれは実現するという。2021年、ペットフードの企業と手を結んだそうだ。いずれ店頭に『AIM活性化』というキーワードのついキャットフードが並ぶことになるだろう。
さて。
宮崎医師にとっては、猫の寿命を伸ばしたのはあくまでも研究の寄り道に過ぎない。
【人間の、治らない病気】を減らすこと、今日も研究し、奔走してくれている。
というわけで以上、投稿が長くなりましたが、専門的なところはナナメに読み飛ばしたとしても
読後感のいい希望に満ちたおもしろい本でした!猫飼いさんには得に、読んで欲しい!!!
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