プロ目線!日本のアート事情とアートの選び方
とてもおもしろそうなタイトルのセミナーがありましたので
受講申し込みをしました。
たった1時間の内容だったのですが
情報が盛沢山でしかも大変面白かったので
ここに受講レポートとして残しておきたいと思います。
ちょっと長い文章になりますがどうぞおつきあいください。
※以下は、セミナーの内容だけではなく、
私個人が調べたものや言葉なども含んでいます。
独断によるものもあるかと思いますが
まぁまぁそんなめくじら立てずゆるやかにお読みください。
※聞き間違えや誤解した内容などあるかもしれません。
間違っている情報があれば訂正・追記などいたしますのでご指摘くださいませ♪
■現代アートのマーケット
まず最初に基本情報。
皆さんは世界のマーケットにおけるアート事情って
ご存知でしたでしょうか。
私は知りませんでした(苦笑)
ダントツでまずアメリカ合衆国。
次にイギリス。
そして中国。
この3つの国で
世界のアートのマーケットシェア8割を占めているのだそうです。
少し前に元ZOZO TOWNの前澤さんが
ジャン・ミッシェル・バスキアの絵を123億円で落札したことで話題になりましたが
日本ではこのように「絵を買う」人が実はとても少なくて
マーケットが動かないのが現状です。
2019年はGDP世界ランキング3位。
総資産1億円を超える富裕層がいる国ランキングでも
日本は2位です。
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資産1億円クラスの富裕層が多い国と全体の割合
1位 米国 41%(1355万4000人)
2位 日本 9%(282万6000人)
3位 英国 7%(222万5000人)
4位 ドイツ 5%(163万7000人)
5位 フランス 5%(161万7000人)
6位 中国 5%(159万人)
7位 イタリア 3%(非公開)
8位 カナダ 3%(111万7000人)
9位 オーストラリア 3%(106万人)
10位 韓国 2%(非公開)
10位 スイス 2%(71万6000人)
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「グローバル・ウェルス・レポート2016」より
決して貧乏なわけではない。
というかむしろお金はあるのにも関わらず、
アートを買う人がいないのが日本という国です。
アートという分野の成熟度が低いのかもしれません。
■アートはなんのために買う?
アートには2つの側面があります。
投資としてのアート
この発想の人はLogicで絵を買います。
銀行やファンド系を通して購入するのですが
資産価値が十分あるのかを基準に
オールドマスターから現代アートまで基本的には分散投資をします。
アートの所有目的はあくまでもAsset(資産価値)です。
インテリアとしてのアート
この発想の人はEmotionで絵を買います。
自宅に飾りたい。
予算内で買える!頑張ればなんとか買える!
アートの所有目的はLove(好き!)です。
Assetはあくまでも「付随してくる」ものにすぎません。
今回のセミナー内容としては、
投資としてアートを買う、ではなくて
インテリアとしてのアートという側面から
お話をたっぷりと堪能させていただきました。
まったく知らなかった世界で、非常に勉強になりました。
そしてまた、なぜいままでこの分野に目を向けていなかったのかと
今更ながら自分を恥じてしまいました。
■アートはどう活用する?
アートをどのように活用したらいいのだろうかと難しく考える必要はなくて、
まずはインテリアとして楽しむ。
それに尽きるんだと思います。
そして十分に楽しんだあとは
子孫に引き継いで残すなり
売却するなり
美術館などに寄付をするなりすればいいのです。
まずはインテリアとして素直に楽しもう。
前澤さんも123億で落札したバスキアの絵を
リビングに飾ってインテリアとして楽しんでいらっしゃいます。
LogicではなくてEmotion、
Asset(資産価値)ではなくて
Love(好き!)でアートを所有しているのだろうことがわかり
好感が持てます。(とはいえ資産価値としても十分!)
※追記
前澤さんは他にもバスキアの絵を62億で落札し、所有していました。2022年5月にそれを110億で売却したことがニュースになりました。6年間所有しているうちに価格がほぼ倍に高騰、48億の利益をだすという・・・さすがとしかいいようがありません。
こうして見比べてみると
アートがない部屋とアートがある部屋の違いは一目瞭然ですね。
現代アートの破壊力。すごい。
空間をがらりと変える。
ただし。
飯沼さんはこうもおっしゃいました。
アートは
Likeの気持ちでは買えません。
Loveじゃないと所有できませんよ。
おっと・・・なんだなんだ。
これはなかなかハードルが上がったぞ(笑)
■世界は今アートブームだ
世界には多くのアートフェアがあるのですが
中でも3大フェアをあげるとするならば
この3つだろうと飯沼さんは教えてくれました。
①Art Basel (アートバーゼル)(スイス)
②FRIZE(フリーズ)(ロンドン)
③FIAC(フィアック)(パリ)
アートフェアとはアートの見本市のことです。
上記の3大フェアは超有名で、
出品されている作品はどれも数千万単位ですが、
500ポンド(約7万円)ぐらいから買える作品が出ているaffordable art fairや
100万円以下のものだけ集められているものなど、
カジュアルなフェアもたくさんあります。
飯沼さんはこういった現代アート、とくに
イギリスにおけるアート事情に大変お詳しいので、
あちこちのフェアに実際に通われたご経験から
たくさんの事例をお話くださいました。
聞いているだけで楽しい!と思いました。
文化的なものに触れているこの感じ、とても刺激的です。
■資産価値のでるアートが欲しい!
結論をいってしまえば
現代アートはLove(好き!)の感覚で選ぶ。
それでいい。
それがすべて。
ということなのですが、
が、
が、
ですが、
どうせなら資産価値も出てくれたら嬉しい。
そう思うのは当然かもしれませんよね。
資産価値のでるアートってどうやって見つければいいのだろうか?
資産価値のあがるアーティストになるためには
一般的に「王道」とされる道があります。
1)美大で修士号を取得する(なんだかんだで経歴は必要)
↓
2)どこかのギャラリーで作品を展示してもらう
↓
3)個展を開く
↓
4)海外のアートフェアに参加する
↓
5)名門ギャラリーと契約
3までは行けても、4と5までたどり着けるのはほんの一握りです。
ギャラリーはプロデューサー的な役割を果たしますので
世界的に有名なアーティストになる人は
たいがい有名なギャラリーと契約していることがほとんどです。
例えば5までたどりついた日本人アーティストで言うと
草間彌生はDavid Zwirner
公式サイトhttps://www.davidzwirner.com/artists/yayoi-kusama
村上隆はガゴシアン
公式サイトhttps://gagosian.com/
奈良美智(ならよしとも)はpace
公式サイトhttps://www.pacegallery.com/
というように、みんな超絶超一流の有名galleryと契約をしています。
将来のことはわかりませんので「絶対」ということはないのですが、
趣味程度でやっているのか人生かけてやってるのか、
この王道のステップを踏んでいくであろう作家さんなら
もしかしたら将来資産価値がでるかも!?という可能性は高く、
ひとつの目安になるんじゃないでしょうか、とのことです。
ところで
絵の値段が高い、というのと
資産価値がある、というのはイコールではないんですね。
高い値がついていても売れ残っているようなら意味がなくて
需要と供給の資本経済で資産価値のあるなしが判断されます。
あくまでも、アートは需要と供給です。
アートは画力があるだけでは評価されない側面を持っていて
時代性にマッチしているか、話題性があるかがカギになります。
というか、むしろ絵がうまいうまくないの画力よりも
話題性があるかどうかのほうが重要で
有名にならなきゃ資産価値は出ないし、
逆に言えば、有名だったら資産価値がぐんと跳ね上がるということです。
バンクシーがわかりやすい例ですよね。
■アートはどこで買えばいいのか
アートの入手経路は大きくわけるとこの4つ。
①プライマリーマーケット(=ギャラリー/アートフェア)
②セカンダリーマーケット(=オークション)
③作家個人から買う
④インテリアショップなどで買う
アートを単純に楽しむだけならどの入手経路からでもよいと思います。
ですが、もし少しでも「資産価値」のでそうなものを求めたいと思ったのなら
①②の方法でしかそれは出会えないかもしれません。
資産価値として認められるアーティストの作品はたいがい
名門ギャラリーと契約していますし、
あるいは大きなアートフェアに参加しています。
小さな(カジュアルな)アートフェアに出品していては
キーマンが買い付けにきませんし、
つまり世に出る(話題になる)チャンスに出会えません。
資産価値をうむには有名になる必要があり
仕掛けるためにははギャラリーの存在はすごく大きいので
そういったキーマンに会えないところで絵を売っている作家さんは
投資や資産価値をうませるという意味では遠回りです。
プライマリーマーケットとセカンダリーマーケットにいない作家は
言ってしまえば表舞台のマーケットから降りてしまった世界にいることになります。
ですから、
作家個人がインスタで自分の作品を売っていたりだとか
インテリアショップなどで扱ってもらっているようでは
美術界の人たちから見ると
それはアートではなくてプロダクト、
もしくは
それはアートではなくてインテリア雑貨、
そんなふうにとらえられます。
10万で買った絵が、10年後に15万で売れたら嬉しい。
そういう期待を持つのであれば
ギャラリーやオークションを通した作品を探すべきですが、
気に入った絵に出会えたのなら
資産価値うんぬんなんか関係なく、
それはもちろんインテリアとして楽しむのが大正解です。
■なぜ日本ではアートが売れないのか
こんなにお金持ちがいるにもかかわらず
絵が売れない日本。
なぜ日本人はアートを買わないのだろう?
要因はいろいろあるのだろうけれどひとつの考えとして
インテリア業界のせいでもあるんじゃないかなと飯沼さんはおっしゃっていました。
ペンキ仕上げのヨーロッパの白い壁は
アートがなくちゃサマにならない。
ところが、日本はいい家にしようとすると
石を貼ったり高級な壁装材を採用したりして
空間を素敵に表現してしまいます。
建材が頑張ってしまうんですね。
だからアートの出番がなくても済んでしまうのです。
それに、
というか、
だから、
インテリアの仕事をしている人たちがアートを全然提案しない。
(・・・うっ、耳が痛い(笑))
1000万するキッチン。
高級な内装材。
そういった方向にお金を投入して家を作る人はいますが
引っ越し先にそんなもの持っていけませんよ。
どんなに高価な壁紙も、剥がしたらゴミになるだけですよ。
でも、アートなら
また次の家にだって持ち運べるんですよ!
アートのほうがエコですよ!
そんなふうに考えるのもいいのではないでしょうか。
■アートはLove
現代アートの価格の決め方(号単価の話)や、
インテリアにおける提案の方法、
「現代アート」と日展や二科会といった界隈の「画壇」との違いなどなど
他にもためになるお話をたくさん伺いました。
何度も重複しますが
言いたいことはつまり何かといえば
アートを選ぶのはLoveの気持ちで、ということです。
空間に合う合わないよりも好きかどうかのほうが重要。
そういわれたら
なんだか現代アートは全然難しくないし、自由で、
なんだ、自分の気持ちの赴くままに選んでいいんだな!って思いますよね。
クライアントさんに向けてインテリアコーディネートでご提案する云々の前に、
まずは、そう、自分自身がアートが欲しくなりました。
決して安くはないので、そういう意味では資金的にハードルが高いのですが(笑)
選び方という意味ではすごく自由だと感じます。
インテリアコーディネートの最後の仕上げ、画竜点睛的にアートを探そうとすると
非常に選択肢が狭められてしまうので
先にアートを選んでから
それに合わせてインテリアデザインを決めていくというやりかたが
きっとベストなんだろうということがわかりました。
あっというまの1時間でした。
飯沼さん、ありがとうございました。
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セミナー会場だったフジギャラリー新宿では、
素敵な作家さんたちの作品が揃っています。
アーティストの板垣晋さんがいらっしゃったので
作品の前で一緒に写真を撮ってもらいました。
ハンガリーに1か月滞在し、描き上げた3枚の連作です。
淡い色合い、まるで夢の中の記憶のような風景画でした。
ご本人もこの絵のように柔らかい雰囲気でお話される方でほんわかな印象。
この絵の製作ダイアリーはこちら。
↓
ハンガリーレジデンス紀行 板垣晋の熱い夏
(ところでなんでこんなに顔がむくんでるの!わたし)
というわけでフジギャラリーのある西新宿。
西新宿にはちゃんと
LOVEがありますよ。
(新宿アイランドタワー前)
(1995年製作)
(ポップアート作家/ロバート・インディアナ)
おあとがよろしいようで。
(2019.12セミナー受講)