無題

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いつものFIATを運転していると
車道に飛び出てヨロヨロと走る自転車が左前方に。

そんなに広い車幅でもないので追い抜くこともできず、
ヨロヨロとしたスピードに後ろからついていく。

自転車は向かい風をうけていた。
袖口から背中にかけてジャンバーがおおきく空気をたくわえて
パラグライダーのようにふくらんでいる。
70代・・・くらいだろうか。
よろよろとペダルを漕いでいるのは、一人の老女だった。
ひたむきに風にむかって、ペダルを漕ぐ。
前傾姿勢。
ヨロヨロ、ヨロヨロ。

私は車のハンドルをにぎりながら
それを無言で見ていて
ふいに実家の母を思い出したりする。

私の68歳の母は自転車に乗らない。
移動はいつも車だし、
そもそも大変元気に暮らしていて
韓国だのなんだのと出かけていたりする。

いま目の前で自転車をこいでいる老女と
なにひとつイメージが重なるものがない。

にもかかわらず、その光景をみて母を思い出したのだ。

老いた親。
ひたむきな姿。

いわゆるノスタルジックなイメージが
郷愁というスイッチを勝手にオンしたのだろう。

わたしの脳みそって適当だよなぁ、って思う。

脳みそって、そこそこポンコツに出来ている。

空は青くて澄んでいた。
黒い鳥が横切ったので
私は「ぴゅー!」って言ってみた。